このブログで以前きつね憑きについての漫画を紹介しようとしたことがありました。編集に不慣れなこともあったためか消えてしまい、復活させることもできたのですが敢えてそうすることはしませんでした。以来このブログでは特定の書籍について書くことはしていませんが今回は特別です。
一般的な書店店頭で目にする神道関連書籍は神社の紹介(パワスポや御朱印情報等)や神々の紹介(御利益に関するもの)が多いと思います。
ごくまれに神社(神道)の関係者が神職と氏子について記した書籍を目にすることがあります。これはそんな一冊です。
この神社の宮司は民俗学者の神崎宣武さんだということは書くときにネットで目にして知ってはいました。書店で手にして中をパラパラと読んだ時にようやく気がつきました。
この書は吉備高原南端の神社宮司である著者の数十年にわたる郷里の農村と信仰についての当事者目線での記録です。といっても難しい内容ではなく楽しく読めるものです。この宇佐八幡神社のある美星町(現井原市美星町)は古い祭りの姿をとどめている(いた)貴重な地だそうです。
全国的なことだと思いますがバブルの頃に吉備国の風景もかなり変わりました。国道でも譲り合いながらでないと通れない部分があることが当たり前だったのに、できるだけ曲がらないですむ太い道になりました。それを動脈として県道も二車線が当たり前になっていきました。
その後、著者も書かれていますが平成の大合併が村落共同体が維持してきた伝統文化にとどめを刺したのは吉備国人として肌で感じます。
このブログでは吉備国を中心とした神社の記事が数分の一を占めます。吉備国の田舎とそこにある神社の背景を知ることのできる価値ある書だと思います。
講談社学術文庫で二年前に出たばかりの本ですから入手は容易だと思われます。興味のある方はぜひ購入して吉備国田舎の神との暮らしを体験してください。